アクセル・ホネット(Axel Honneth)関連文献リスト

 アクセル・ホネットの社会思想・社会理論に関する各種文献のリストです。現在、作成途中、未完成です。

 このリストは、次のような『社会学評論』スタイルに従って作成していきます。

Fromm, Erich, 1941, Escape from Freedom, New York: Reinehart and Winston.(=1951,日高六郎訳『自由からの逃走』東京創元社.)

 各文献について、個人的な注記やコメント、引用を適宜、記しています。


 アクセル・ホネットの文献のうち、邦訳されているもののリストです。

著作

Honneth, Axel, 1983, Kritik der Macht, Frankfurt: Suhrkamp. (=1992, 河上倫逸訳『権力の批判』法政大学出版局. )

権力の批判―批判的社会理論の新たな地平 (叢書・ウニベルシタス)

原著は「後記(1988)」を追加したものが1989年に刊行されているが、この「後記(1988)」は邦訳に含まれていない。

――――, 1992, Kampf um Anerkennung, Frankfurt: Suhrkamp. (=2003, 山本啓・直江清隆訳『承認をめぐる闘争』法政大学出版局. )(=2014, 山本啓・直江清隆訳『承認をめぐる闘争〔増補版〕』法政大学出版局. )

承認をめぐる闘争―社会的コンフリクトの道徳的文法 (叢書・ウニベルシタス) 承認をめぐる闘争: 社会的コンフリクトの道徳的文法 (叢書・ウニベルシタス)

邦訳は2000年7月と記された「日本語版への序文」を含む。原著は「後記」を追加したものが2003年に刊行されており、その「承認の根拠——批判的な反問にたいする応答」の日本語訳を収録した邦訳増補版が2014年に刊行された。「訳者あとがき(増補版)」によると、2003年に刊行された「旧版における誤記、拙い表現、誤訳の見直し」をおこなったとされる。

――――, 2000, Das Andere der Gerechtigkeit, Frankfurt: Suhrkamp. (=2005, 加藤泰史・日暮雅夫他訳『正義の他者』法政大学出版局.)

正義の他者―実践哲学論集 (叢書・ウニベルシタス)

原著にはない論文「手続き主義と目的論の間―ジョン・デューイの道徳理論における未解決問題としての道徳的コンフリクト」が邦訳には含まれている。ホネットから訳者に当初送られてきた原稿には上記の論文が含まれていたが、ドイツで原著が刊行されるさいにズーアカンプ社内の重複掲載などの問題から収められなかったという(「訳者あとがき」398ページより)。

――――, 2001, Leiden an Unbestimmtheit, Stuttgart: Reclam. (=2009, 島崎隆・明石英人・大河内泰樹・徳地真弥 訳『自由であることの苦しみ――ヘーゲル『法哲学』の再生』未來社.)

自由であることの苦しみ―ヘーゲル『法哲学』の再生 (ポイエーシス叢書)

2008年5月付のアクセル・ホネット氏による「日本語版への序文」、大河内泰樹氏による「訳者解説1 コミュニケーション的自由の政治思想――ホネットによるヘーゲル『法哲学』読解」、島崎隆氏による「訳者解説2 ヘーゲル『法哲学要綱』とホネットの解釈」を含む。「日本語版への序文」では下記の引用のように記されている。ここで言及されている研究の成果が、Das Recht der Freiheit: Grundriß einer demokratischen Sittlichkeitであろう。

一年前から、社会的正義の構想のための基礎をデザインするという試みに私は取りかかっています。そしてこの構想は、私たちの時代の自由を保証する制度の詳しい説明へとつながることになるのです。[中略]こうして私は、社会的現実にそって自由を保証するこうした制度の構造を認識することができるわけです。そして、ヘーゲルの場合と同様に、そのさいまた、社会的な病理現象に注意を向けるという試みが重要であるはずであり……(3-4ページより)。

――――, 2003, Unsichtbarkeit, Frankfurt: Suhrkamp. (=2015, 宮本真也・日暮雅夫・水上英徳訳『見えないこと』法政大学出版局.)

見えないこと: 相互主体性理論の諸段階について (叢書・ウニベルシタス)

――――, 2005,Verdinglichung, Frankfurt: Suhrkamp. (=2011, 辰巳伸知・宮本真也訳『物象化』法政大学出版局.)

物象化 (叢書・ウニベルシタス)

宮本真也氏による「訳者解説1」、辰巳伸知氏による「訳者解説2」を含む。「訳者解説2」では、英訳書に含まれている、ジュディス・バトラー、レイモンド・ゴイス、ジョナサン・リアのコメントとそれらに対するホネットの返答が紹介されている。

Fraser, Nancy und Axel Honneth, 2003,Umverteilung oder Anerkennung?, Frankfurt: Suhrkamp. (=2012, 加藤泰史監訳『再配分か承認か?』法政大学出版局.)

再配分か承認か?: 政治・哲学論争 (叢書・ウニベルシタス)

加藤泰史氏による「承認論の未来?――監訳者あとがきに代えて」を含む。邦訳は原書のドイツ語版を底本とし、英語版も適宜参照。また、もともとの論文での英語あるいはドイツ語の語義やニュアンスを基本にしつつ、原書のドイツ語版と英語版の間での訳し分けの意図を尊重して、訳語の振り分けを行ったとのこと。原書のドイツ語版と英語版での異同については訳注に記されている。

論文等

アクセル・ホネット,1999,「軽んじ(られ)ることの社会的ダイナミズム―ひとつの批判的社会理論の位置づけのために」情況出版編集部『フランクフルト学派の今を読む』情況出版,6-30.

フランクフルト学派の今を読む

藤野寛さんによる訳。初出は『情況』1998年5月号。原注1によると「もともとLeviathan,Heft 1/94に掲載された論考に少し書き加えたもの」とされている。最終的に、Das Andere der Gerechtigkeit(2000)(邦訳『正義の他者』)に収められているが、そこでは元論文が、Christoph Goerz(Hg.),Gesellschaft im UEbergangと記されている。加筆修正が行われており、興味深いと思う。

――――,2003,「批判的社会理論の承認論的転回―アクセル・ホネットへのインタヴュー」永井彰・日暮雅夫『批判的社会理論の現在』晃洋書房,177-221.

批判的社会理論の現在

日暮雅夫さんと岩崎稔さんによるインタビューの邦訳。知的来歴、フランクフルト学派やハーバーマスの議論との関連、『権力の批判』と『承認をめぐる闘争』、ポストコロニアリズム、リベラル・コミュニタリアン論争、など中身が充実していると思う。


アクセル・ホネットの社会思想・社会理論に関する日本語二次文献のリストです。基本的に文献現物を手元で確認の上、掲載します。

赤石憲昭,2007,「ホネットの批判的社会理論の批判性―現代における労働と承認の問題圏」『情況』68: 134-159.

『情況』2007年11・12月号(通巻68号)の「特集2ドイツ現代思想の行方」の掲載論文。労働を主題として、初期の論文から『物象化』まで。ポストフォーディズムの現状を念頭に、不十分さを批判。

千葉健,2006,「自己実現の病理学―A・ホネットの社会哲学における承認論の射程」『倫理学』22: 29-39.

自己実現概念の再解釈という点からホネットの議論を検討。『承認をめぐる闘争』と『正義の他者』所収論文。「正義論」の位置付けが難しいかも。ハーバーマスとの異同はどうか。

千葉健,2006,「コミュニケーションをめぐる闘争―アクセル・ホネットにおける承認の道徳とその認識論的基礎について」『哲学・思想論集』31: 67-81.

「不可視性」と『物象化』について。物象化は他者の物象化の議論。

藤野寛,2010,「アクセル・ホネットと社会的なもの」『言語社会』4: 239-256.

日暮雅夫,2002,「承認論の現代的座標―ホネット社会理論の展開」『思想』935: 48-65.

ホネットの承認論のフランクフルト学派(第一世代と第二世代)との共通性と差異、『承認をめぐる闘争』の承認論の枠組み、ポストモダンとの論争(『正義の他者』)ならびにフレイザーとの論争。「おわりに」で示される問題点は、ポスト伝統的共同体をより明確にすることと、承認の三形態の議論がヨーロッパ以外にも普遍妥当性を持つのかどうか。ホネットも厳密な意味では普遍妥当性を持つとは言わないかもしれない。

宮本真也,2002,「承認とコミュニケーション」『年報人間科学』23(1): 1-20.

ホネットを一つの手がかりにテイラーとフレイザーの立論を批判。またホネットの承認論を再構成。『承認をめぐる闘争』、『正義の他者』所収論文、自由の病理の議論、フレイザーとの論争、承認の認識論など。ハーバーマスの植民地化テーゼを承認論の枠組みで解釈するところが興味深い。またコミュニケーション行為と承認の関係を明らかにすることが課題としてふれられており、これは下記の「コミュニケーションのエピステモロジーへ」で論じられていると思う。あと、末尾の議論、承認の正当/不当の判断がいかにしてどこから可能なのかという問いは重要。

宮本真也,2005,「コミュニケーションのエピステモロジーへ」『社会学研究』78: 95-117.

『社会学研究』78号の特集「批判的社会理論の今日的状況」の掲載論文。

水上英徳,2003,「公共圏と市民社会―自律的公共圏の社会的条件―」『社会学年報』32: 25-46.

『社会学年報』32号の特集「公共性論と社会学のあいだ」の掲載論文。公共圏の活性化の諸条件に関するハーバーマスとホネットの議論を検討。手続き主義的な制度改革を提言するハーバーマス、人びとの動機づけと主体的志向の条件を社会的労働の領域におけるポスト伝統的ゲマインシャフトの成立に見るホネット。この論文のPDFファイルをダウンロードできます。書庫(Archive)にどうぞ。

水上英徳,2004,「再分配をめぐる闘争と承認をめぐる闘争─フレイザー/ホネット論争の問題提起─」『社会学研究』76: 29-54.

『社会学研究』76号の特集「社会理論と社会運動」の掲載論文。フレイザーとホネットの論争を素材に、フレイザーの二元論とホネットの一元論を対比。また社会運動に対するホネットの基本的スタンスの意味を考察。この論文のPDFファイルをダウンロードできます。書庫(Archive)にどうぞ。

水上英徳,2005,「労働と承認―ホネット承認論の視角から」『社会学研究』78: 73-94.

『社会学研究』78号の特集「批判的社会理論の今日的状況」の掲載論文。フレイザーとの論争を中心に労働についてのホネットの議論を検討。この論文のPDFファイルをダウンロードできます。書庫(Archive)にどうぞ。

大畠啓,2002,「HabermasとHonnethにおける理論と実践」『社会学評論』53(3): 365-379.

理論と実践の媒介問題という観点からホネットの議論を検討。『承認をめぐる闘争』『正義の他者』。また、とくに道徳感情と連帯の捉え方について、ハーバーマスと比較。ホネットの立論の問題点としては、実践が非合理的なものに転化するリスクを挙げている。ハーバーマスとホネット両者をふまえ、生活世界論の展開が今後の課題として提起されているが、理解が難しい。

大畠啓,2008,「理性の社会病理学としての批判理論—A.ホネットの「世界を切り開く批判」『社会分析』35: 61-78.

初期から『承認をめぐる闘争』をへて2000年代の論文「理性の社会的病理」まで。とくにハーバーマスと対比するかたちでホネットの承認論が位置づけられている。ホネット承認論の課題としては、哲学的人間学の規範的基礎が脆弱であること、それと関連して、精神分析の認識論を社会学化することが指摘されている。

大河内泰樹,2007,「カントとヘーゲルの間―現代批判理論の位置規程をめぐって」『情況』68: 120-133.

『情況』2007年11・12月号(通巻68号)の「特集2ドイツ現代思想の行方」の掲載論文。ホネットの著作『無規定性の苦しみ』に言及。

佐藤直樹,2005,「グローバル化時代における公共圏再考への視座―フレイザーとホネットの対話を通して」『年報社会学論集』18: 276-287.

フレイザーとホネットそれぞれの社会思想を、グローバル化のもとでの公共圏形成の条件、いいかえれば政治的意志決定への参加の条件に関する議論として検討。ホネットについては、フレイザー=ホネット論争での議論に加えて、『正義の他者』、「不可視性」の議論についても考察。「連帯」の基礎としての「道徳的感受性」と「協働」という位置づけ。


アクセル・ホネットの社会思想・社会理論を主題としているわけではありませんが、言及や関連がある日本語文献のリストです。

加藤尚武,2007,「『精神現象学』というゆがんだ真珠:哲学的アイデアの宝庫」『現代思想』35-9: 8-13.

現代思想2007年7月臨時増刊号 総特集=ヘーゲル 『精神現象学』二〇〇年の転回

『現代思想』2007年7月臨時増刊「総特集 ヘーゲル 『精神現象学』二〇〇年の転回」に収められている。ヘーゲルが本質的に未完成の思想家、体系家というよりアイデアマンであるとし、そこから、ヘーゲルのテキストを離れて「承認」概念を一人歩きさせている議論を批判。ホネットに対しても、その承認論が「ヘーゲル哲学の現代化として魅力的な構想」であるが、しかし、ヘーゲルのテキストからの明確な引用とその解釈が示されていないことを批判している。

どこかに「ヘーゲルの承認論」という幽霊がいて、その幽霊について、膨大な書物が書かれているけれども、幽霊は一度も姿を見せない。(12ページ)

高橋順一・藤野寛・田辺秋守・仲正昌樹・浜野喬士,2007,「座談会:ドイツ現代思想をめぐって」『情況』68: 64-99.

情況 2007年 12月号 [雑誌]

『情況』2007年11・12月号(通巻68号)の「特集2ドイツ現代思想の行方」に収められている対談。いろいろな論者が取り上げられるなかでホネットにも言及あり。

  • 最終更新: 2017-03-03