(1999)ナンシー・フレイザーへのインタビュー

ナンシー・フレイザーへのインタビュー #

Fraser, Nancy and Williams, Jeffrey, 1999, “Politics and Philosophy: An Interview with Nancy Fraser,”the minnesota review, 50/51: 143-159.

ジェフリー・ウィリアムズによる、ナンシー・フレイザーへのインタビュー。インタビューがおこなわれたのは、1999年4月6日。

かなりの紙幅にわたりフレイザーの学問的遍歴や学生時代の政治活動などが取り上げられている。インタビューの終わりごろで(154-158)、再分配と承認をめぐる近年の研究内容に触れられている。

フレイザーによれば、(承認にかかわる)文化的政治と(再分配にかかわる)社会民主的政治の現在の分岐は、私たちがそこに生きる社会編成に根を下ろしており、この社会編成のあり方を体系的に明らかにすることが現在のフレイザーの研究課題とされている。そのさい、フレイザーは、マックス・ウェーバーを手がかりとして、階級(class)と地位(status)の間の関係の問題を考察することが必要とみなす。階級と再分配、地位と承認といった概念枠組みが示されている。

この関連で、現在執筆中の著作として、3冊、挙げられている。1冊目は、Adding Insult to Injury 。これは、フレイザーの論文「再分配から承認まで?」とそれに対する批判(Rorty, Benhabib, Butler, Young, Phillips, Elizabeth Anderson, Kevin Olson, Joe Heath)、ならびにフレイザーのレスポンスからなる。この本は2000年に出版されている。

2冊目は、アクセル・ホネットとの共著の著作、Redistribution or Recognition ? で、2003年4月にまずドイツ語版が出版され、2003年9月に英語版が出版予定となっている。フレイザーによれば、ホネットはいわば現代のヘーゲルであり、これに対し、フレイザー自身の立場は現代のヘーゲル・プラス・マルクスないしウェーバーだとされる。

3冊目は、まだ作業がおこなわれていないが、より体系的な著作とされ、再分配と承認、経済的なものと文化的なものの問題に取り組んできた重要な思想家たちを扱う諸章からなる。これには、ヘーゲル、マルクス、ウェーバー、ブルデューらが含まれる。フレイザーによれば、ブルデューは、再分配と承認の問題に取り組んだ現代のもっとも重要な理論家と評価されている。

▼上記の記事は以前のウェブサイトに2003年9月10日に掲載したものを再録したものです。

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