学術雑誌における特集

概要

 日本社会学理論学会の機関誌『現代社会学理論研究』第4号(2010年)の特集「社会学的理論構築における承認論の可能性」。2009年9月20日に行われた同学会大会のシンポジウムがもとになっている。

 特集の構成は次の通り。

  • 宇都宮京子「特集序文・社会学的理論構築における承認論の可能性」
  • 明戸隆浩「チャールズ・テイラー『承認の政治』論の再構成———『親密件における承認』と『公共圏における地平の融合』」
  • 出口剛司「アクセル・ホネットの承認論と批判理論の刷新———批判理論はネオリベラリズム的変革をどう批判するのか」

特集序文

 宇都宮氏の特集序文(1-2ページ)の最後で、明戸氏と出口氏の二つの論文の接点についてふれている。曰く「なぜ今『承認』が問題になるのかを改めて問うときその接点が見えてくる」。一つには、チャールズ・テイラーとアクセル・ホネットにおける「承認」概念は、同じくヘーゲル哲学が源泉であり、「倫理的要素を本質的に内包している」。そして、この「倫理的内容」に関係することとして、次のように述べられている。

……社会にマイノリティの存在や差別、格差があり、それらを問題として捉える理論が要請されているかぎり、承認論はその意義を持ち続けると思われる。

 マイノリティ、差別、格差の問題と承認論が深く関係していることは確かと思うが、ただ、もう少し広がりのある、より一般的な問題構成として考える必要もあるだろう。少なくともホネットは、その方向で議論を展開しているように見える。


概要

 日本社会学理論学会の機関誌『現代社会学理論研究』第5号(2011年)の特集「ケアと承認の語られる場———決定・介入・帰属・分配」。2010年9月に行われた同学会大会のシンポジウムがもとになっている。

 特集の構成は次の通り。

  • 出口剛司「特集序文 ケアと承認の語られる場———決定・介入・帰属・分配」
  • 三井さよ「決定/介入の割り切れなさ———多摩地域における知的障害当事者への支援から」
  • 天田城介「『ケア』と『承認』を結びつかせている仕掛け」
  • 安部彰「ケアにおける承認の問題———パターナリズムと『安楽死』をめぐって」

特集序文


概要

 東北社会学会の機関誌『社会学年報』第41号(2012年)の特集「現代社会における公正と承認」。2011年7月17日に行われた同学会大会の課題報告がもとになっている。

 課題報告では、川本隆史氏による規範理論的な報告がされているが、今回の特集には収録されていない。

 特集の構成は次の通り。

  • 正村俊之「解題:公正と承認の社会的・思想的な背景」
  • 阿部晃士「解題:社会的公正と承認への道筋」
  • 白波瀬佐和子「論文:世代と世帯からみる経済格差」
  • 金菱清「論文:社会的公正性を支える不公平の承認———不法占拠と3.11大震災における『剥き出しの生』をめぐって」
  • 佐藤嘉倫「コメント:公正・承認・社会的排除———公正理論の視点から」
  • 下夷美幸「コメント:公正と承認———母子世帯問題から考える」

解題

 正村氏による「解題:公正と承認の社会的・思想的な背景」(1〜3ページ)では、公正の問題と経済的格差、承認の問題と(「多文化主義」と関係する)文化的対立とが、それぞれ対応づけられている。そのうえで、新自由主義のもとに推し進められたグローバル化が、この経済的格差と文化的対立とを拡大させる要因の一つであることが指摘されている。

 「承認」が文化的多様性の承認として位置づけられているのは、少し限定しすぎているように思える。たとえば労働における承認の問題はどう捉えられるのだろうか。同様に、「公正」を経済的領域に結びつけている(ように見える)のも狭く感じる。文化的対立の問題における「公正」も問われるべきことだろう。この点を考えるなら、そもそも「公正」と「承認」が、「と」を間にはさんで同レベルに置かれていること自体、もう少し検討が必要に思える。